タバコの葉に含まれる有害物質「ニコチン」に、脳神経細胞の再生を促す効果があるこ とを、金大医薬保健研究域薬学系の米田幸雄教授らの研究グループが23日までに確認し た。動物の脳細胞にニコチンを加えると、神経細胞ができる割合が増加した。研究グルー プによると、人間に適用できれば、アルツハイマー病など、神経細胞の脱落に起因する病 気の予防、治療法開発につながる可能性があるという。
情報処理と情報伝達を担う神経細胞は、神経幹細胞が作り出す細胞が分化してできる。
米田教授は、喫煙者にアルツハイマー病患者が少ないという過去の調査結果からニコチ ンに着目。ニコチンによって、神経幹細胞が神経細胞に分化する割合が高まるかどうかを 調べた。
実験では、マウス、ラットの胎児の脳から取り出した神経幹細胞を培養し、ニコチンを 加えた。ラットの場合、ニコチンを加えると、神経細胞の割合が25%から40%に増え 、マウスでも同程度の結果が得られたため、ニコチンが神経細胞への分化を促進している ことが裏付けられた。
神経細胞が脱落することで発症するとされているのは、アルツハイマー病のほか、脳卒 中後遺症やパーキンソン病などがある。脳内にある神経細胞は増殖しないが、新たな神経 細胞を生み出すことができれば、脱落した分を補うことができる。
米田教授によると、喫煙によるニコチン摂取は、デメリットの方がはるかに大きい。病 気予防や治療への活用に向けては、ニコチンの有毒性や血管収縮作用など課題も多いが、 すでに禁煙用ニコチンパッチなどの使用例があり、ノウハウが生かせるという。
同グループには寳田剛志助教と大学院生の川越博文さんが参加し、研究成果の特許を申 請した。米田教授は「まさに『毒をもって毒を制す』で、有害な物質でもうまく使えば病 気予防や治療に役立つ可能性がある。企業と連携して研究を進めたい」と話した。
脳内の神経細胞、ニコチンで再生 金大・米田教授ら確認 |北國・富山新聞: