"息子　賃貸マンションの家賃をたかだか月々４千円下げるためだけに、わざわざ裁判までするやつがいるんだからさ。あんたのことだよ、親父。 親父　訂正、裁判じゃなくて調停。やっぱり闘ってないと面白くないんだよ。..."

“息子　賃貸マンションの家賃をたかだか月々４千円下げるためだけに、わざわざ裁判までするやつがいるんだからさ。あんたのことだよ、親父。
親父　訂正、裁判じゃなくて調停。やっぱり闘ってないと面白くないんだよ。
息子　たかだか月４千円のために、ひどくエネルギーを使っているわけだろう。変なところで闘うんだよね。金にこだわっているのかこだわっていないのか、どっちなのよ。
親父　こだわってないの。だから４千円の値下げで手を打ったわけだよ。
マンションのオーナーが変わって、同じ部屋の家賃を１万５千円も下げて市場に出したんだよ。我々既存のテナントも一緒に引き下げろっていったら。絶対に一銭も引きませんっていうゼロ回答だったんだよ。それはないだろう、じゃあとことんやってやろうじゃないかって、簡裁の調停に持ち込んだ。その結果、家賃を４千円引き下げさげさせた。お前ら引き下げたじゃないか。よし、やったっていう意味。ただそれだけ。
息子　自己満足の世界だ。
親父　うん、そうだね。この件に関しては自己満足のためだけだね。
息子　お気楽な。
親父　うん、お気楽。単なる意地っ張り。
息子　まあ関西人っぽいような発想だけどね、値切らなきゃ面白くなみたいな
親父　いやそうじゃないんだよ。経済的目的ではなくて、事あれかし主義なんだよ。事が起んないとつまんないんだよ。そういう意味では、俺は家族にはとっても恵まれていて、子供が事を、
息子　たくさん起こしてくれる。
親父　事ばっかり起こしてくれるから、楽しくてしょうがないわけよ。
息子　俺なんか１人で何回も起こしたよ、統一教会誘拐事件。
親父　娘は子供作って家出てって、何年かしたら子供連れて帰ってくるわ。
息子　息子は２回目のバツをしそうになっているわ。
親父　全部でバツ三つのブラザー＆シスターになりそうだしね。
息子　息子のかみさんは何回もあんたの家に乗り込んでくるわ、アッハッハ。
親父　まあとにかく事がたくさん起るから、それはそれで楽しいわけだよ。それには感謝しているよ。
息子　感謝しているっておかしいじゃない、自分が元なんだからさ、あんたがお袋と結婚したのが元で俺とか妹がいるんだからさ。
親父　そう、俺が元なんだけどさ。あんたのお袋といつも話しているのは、いやあ、我が家には平和はないね。平和がないから楽しいねって言っています。おかげ様でね。
息子　少なくとも脳死になるような家庭じゃないね。”

- Eastedge1946 第七章